1年前に安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を教訓に、警察は要人警護の仕組みを変えた。しかし4月に岸田文雄首相が襲われ、更なる対策を迫られた。いずれも選挙演説会場での事件。来たる国政選挙を念頭に、警察は主催者である政党側への働きかけを始めている。
昨年7月8日に奈良市の参院選演説会場で起きた安倍氏銃撃事件を受け、警察庁は警護の運用方法を定めた要則を全面的に改正した。従来は原則、都道府県警に任せていたが、都道府県警が作成した警護計画案を警察庁が事前に審査する仕組みに改めた。
警察庁によると、審査件数は昨年8月26日の新要則施行後、今年6月末までに約3100件。修正の必要がない割合は当初1割に満たなかったが、累計では約3割になった。現場での警護員の配置や指揮官の任務などに関する指摘が多いという。警察庁は「講じるべき措置への理解は現場に浸透している」とする。
3D再現装置導入 職員の海外派遣も
体制の強化も図られてきた。事件後に17道県警で警護専門の組織が発足し、警護員は全都道府県警で増員された。装備資機材では、現場を撮影し3次元(3D)画像で再現できる装置が、今年中に大規模な警察に導入される見込みだ。立体画像を警察庁に送り、審査に活用する。
また、警察庁職員を米国など海外の警護機関に派遣。訓練視察結果を参考に、警護対象者の動きを流れでとらえる新たな形の訓練を始めた。海外機関との合同訓練も行う予定だ。
こうした取り組みのさなか、安倍氏銃撃から9カ月後の4月15日、和歌山市の衆院補選演説会場で岸田首相の近くに爆発物が投げ込まれ、警察庁は新たな対策を余儀なくされた。6月1日にまとめた検証結果では、聴衆エリアの出入りの確認を主催者側任せにしていたことなどが原因とし、今後は警察と主催者側の連携を強めることにした。
警察庁は幹部が各党本部を訪れ、働きかけを始めている。都道府県警も党県連への要請を開始した。演説会場をできるだけ屋内にすることや、屋外の場合は聴衆との距離をとること、手荷物や金属探知機を使う検査の実施、検査について事前に情報発信することなどを求めている。
「グータッチしない」と約束も……
政党側からは、「会場が屋内…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル